御手洗さん

島田荘司『龍臥亭事件』上下(ISBN:4334728898ISBN:4334728901

島田荘司『最後のディナー』(ISBN:4041682061

『龍臥亭幻想』が読みたかったので後輩から貸してもらってまずこれから。

御手洗ものは久々に読みました。とはいえわずかな出番でもさすがに御手洗は立派です。石岡に物凄い感情移入できますが、これは作者の術中ですね。『ディナー』は『事件』の後日談的エピソード短編三つ。物語的にはわりと種が割れやすく冗長な感もあった『事件』より楽しめました。(続きを読む以降は原則ネタバレあり)


というか、『事件』の方は人死にすぎです。あれだけ人が死んだら単独犯でないことは明々白々になってしまってアレかと。昔の殺人鬼が実はそんなに悪いヤツではなかったというのも微妙にベタな感じで。その殺人鬼の幽霊の正体だけは目から鱗でしたが。

でも島田荘司という人は日本の近代に並々ならぬ関心を抱いてる人ですね。日本人が嫌いなんじゃなかったのか、という気もします。そういう日本人の原型が明治前後の日本にあると考えているのでしょうね。

まあそれにしても『ロシア軍艦』といい生々しすぎて僕にはキツイ感じの過去描写です。「キレイな」ミステリってのも難しいとは思いますが、せめて奇想天外だけれど人間は酷くないミステリが読みたいですね。西澤保彦『七回死んだ男』とか、あんな風なのを。