僕のミステリ十選

京極夏彦『鉄鼠の檻』 山田正紀『ミステリ・オペラ』 森博嗣『黒猫の三角』 綾辻行人『十角館の殺人』 殊能将之『黒い仏』 麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』 西澤保彦『七回死んだ男』 芦辺拓『綺想宮殺人事件』 歌野晶午『密室殺人ゲーム王手飛車取り』 山口雅也…

マキタスポーツ他『東京ポッド許可局』(新書館、2010年)

某方からお借りして読了。その後、現在聴けるポッドキャストもいくつか聴いてみました。以下、まとまらない中の雑感。 感想としては、本の方が読みやすい。というか、彼らのポッドキャストは僕はどうも好きになれない、というのが本当のところ。本として面白…

2008年に読んだ本を振り返る

九ヶ月以上日本にいたにもかかわらず、今年もあまり本が読めていません。経済的余裕がないことと、夏頃の目の疲れ、痛みが酷く、娯楽で本を読む気力があまりなく、秋からは研究のプレッシャーで精神的余裕がほとんどなかったことなどが理由でしょうか。とい…

森博嗣『目薬αで殺菌します』(ISBN:9784061826120)

Gシリーズ第七弾。海月君の怪しさ爆発。これで超絶的な中二病だったとかいうオチならそれはそれで驚天動地なのだが。

山口雅也『キッド・ピストルズの最低の帰還』(ISBN:9784334926106)

読了。『冒涜』『妄想』『慢心』に続く第四短編集。実に十三年ぶり。しかし残念ながら『妄想』当時の感動的な衒学は見られず。山口雅也の苦悩は伝わってくるが。『生ける屍の死』『キッド・ピストルズの妄想』『続・日本殺人事件』が傑作だっただけに。

柄刀一『Fの魔弾』(ISBN:4334075908)

読了。構成は若干トリッキーだが比較的普通のミステリ。「友よ崩せ、絶望の密室」という帯の惹句はかなり期待させたが、期待感ほどのカタルシスはなく。若干テンポがスローだったのが残念と言えば残念。

アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』(ISBN:9784150116347)

多くの人が「ジョウント」と呼ばれる瞬間移動能力を身につけている近未来世界での、一人の人間の復讐の物語、なのだが。 原著が1956年に書かれたことを考えると驚異的といえるような面白さだが、微妙に冷戦時代を感じさせるストーリー展開で、そこが時代を超…

森博嗣『λに歯がない』(ISBN:4061824988)

Gシリーズ第五弾。一応の解決はついていながらシリーズ全体に関する謎はまったく収拾されないまま混迷を深めています。ただまあ西之園さんが若干まともになってきた分、犀川先生が感じ悪く描かれている気がしないでもないですが。

森博嗣『εに誓って』(ISBN:4061824856)

Gシリーズ第四弾。留学前は森博嗣はもういいかな、とか思っていた時期もあったのだが、時を置いて読むとやはり面白い。今回の話は種が明かされる前にジョジョの奇妙な冒険第五部のある台詞が思い出されたが、まあそういうことだった。少なくともGシリーズの…

森博嗣『ZOKUDAM』(ISBN:9784334925611)

森博嗣ブーム再来につき再読。『ZOKU』も読み返したのだが、初読の段階ではあまり気付いていなかった両作品のつながりの矛盾、というかよくわからなさに気付いた。『ZOKUDAM』の方が時間的には前になるのだろうが、『ZOKU』でのロミ視点から見たケン・十河や…

藤崎竜『WaqWaq 04』(ISBN:4088738462)

藤崎竜の世界観は『PSYCHO+』を読んだときからなぜか好きだったのだが、WaqWaqの結末は若干ありきたりで残念。次回作に期待。『サクラテツ対話篇』くらい凄いものが生まれてほしいが。

森博嗣『工学部・水柿助教授の解脱』(ISBN:9784344014923)

昨日見つけて即購入、即日読了。既に森博嗣の他の新作シリーズは買わなくなってしまっているのですが、このシリーズだけは待ち望んでいました(ZOKUシリーズも続いているようなのでそれは楽しみにしていますが)。 感想は難しくて、単に「今回も凄かったな」…

神林長平『ライトジーンの遺産』(ISBN:4257770058)

人間の臓器がダメになってしまう「臓器崩壊」が蔓延する世界での、「サイファ」と呼ばれる超能力者と人工臓器製造会社の因縁を描いた連作短編集。 非常に面白かったんですが、どうにもつかみ所がない、という印象。主人公はライトジーン社に作られた人造人間…

小松成美『中田英寿 誇り』(ISBN:9784344013391)

同様の経緯で読了。中田から見たドイツW杯と引退への軌跡。基本的には中田賛美本だと思います。僕は最近は中田は別に嫌いじゃないし、普通に友達になれると(向こうがどう思うかは知りませんが)思っているんですが、以下の部分だけは残念でした。 (ドイツ…

杉山茂樹『4-2-3-1――サッカーを戦術から理解する』(光文社新書343、2008)

サッカーをフォーメーションにこだわって説いた本です。個人的には、ウイイレ廚と言われようが、フォーメーションとかシステムを語るのはすごく好きなのでかなり期待していたのですが、話に幅がなく、一つのことを繰り返し繰り返し書いているので、読んでる…

東野圭吾『容疑者Xの献身』(ISBN:4163238603)

これも余勢を駆って読了。直木賞受賞作である、数々のミステリベストテンで一位を取っているとのことで期待感が大きかったからか、若干物足りなかったという印象。 (以下ネタバレあり。またこの作品を読んで感動した人の気分を害する恐れがあるので、感動を…

2007年に読んだ本を振り返る

日本にいなかったので当然ながら読んだ本の絶対数は少ないです。今年はあまりちゃんと記録もしていないので印象評価がより前面に出ています。 オーソン・スコット・カード『エンダーのゲーム』(→読後感想) スタニスワフ・レム『完全なる真空』 神林長平『…

スティーヴン・バクスター『プランク・ゼロ』(ISBN:4150114277)、『真空ダイアグラム』(ISBN:4150114307)

読了。極めて長大な時空間に渡るSF連作短編集。もともと一冊のものを翻訳時に二分割したらしく、原題は単にVacuum Diagramsとなっています。 基本線は宇宙時代の人類の発展と没落で、それに宇宙の様々な知的生命体が関わってきます。特に強大な力を持ちかつ…

小森陽一『漱石を読みなおす』(ISBN:4480056378)

読了。著者漱石の人生を通して作品を見ることによって、さらに深く作品を理解しようとする、比較的オーソドックスな本。漱石の人生と作品の関係についてそれほど知っていたわけでもないのでそれなりに楽しめました。

市川伸一『考えることの科学』(ISBN:412101345X)

読了。これより後に書かれた類書である『行動経済学』を読んでいたこともあり、知っているトピックも多かったのですが、面白かったのは「総意誤認効果」というものの話。 社会心理学では、他者の態度の分布を自分の態度に引き寄せて推測してしまうことを、総…

古野まほろ『天帝のはしたなき果実』(ISBN:9784061824775)

読了。帯の惹句には「めくるめく知の饗宴、狂おしいまでの超絶技巧」とあるのですが、前半は首肯できても後半には疑問符が付きました。読んでる最中面白かったんですけど、結局意味不明なところに着地してしまったという印象。 あと非常にペダンティックな面…

夏目漱石『こころ』(ISBN:4101010137)

読了、しましたが。正直あまり響きませんでした。そういう話に行っちゃうんですか、という感想です。なんだかなあ。近代日本のいろいろな背景をもう少し知っていれば面白がるところもあったのかもしれませんが、現代の自分の視点で見ると、どうにもポイント…

北山猛邦『少年検閲官』(ISBN:9784488017224)

読了。超絶驚愕作品とは言わないまでも十分楽しめたし、ミステリというジャンルに対するいろいろな問題提起を読み取れたように思う。 今時間的にも精神的にも詳細に考えて書く余裕がないので、とりあえず今思ったことだけメモ的に。 この小説は、「『探偵』…

オースン・スコット・カード『エンダーのゲーム』(ISBN:4150107467)

読了。久々に超弩級のSFにぶちあたった、そんな感想です。まあ1985年の作品なので、これまで読んでなかったのがアレなんですけども。 一言で言えば世界の危機を救う天才少年の物語ですね。しかしまったく嫌みなところもない、決定的に「天才」を醒めさせるよ…

夏目漱石『現代日本の開化』

一方、『行人』の解説で言及されていたものを、勢いあまって青空文庫からダウンロードして読んでしまいました。これは『行人』を書く前に関西に行った時に、和歌山で公演したものを文字にしたものです(明治44年8月)。これまで読んだ小説の登場人物のイメー…

小松左京『日本沈没』上下(ISBN:4094080651、ISBN:409408066X)

読了。「SF」として楽しめたというよりも、「国とはなにか」「国がなくなるとはどういうことか」について考えさせられた本でした。 特に現状海外にいる身としては、明日朝起きた時「日本」という国がなくなっていたら、ということを考えると背中に冷たいもの…

ダン・シモンズ『ハイペリオン』『ハイぺリオンの没落』『エンディミオン』『エンディミオンの覚醒』

去年の十二月頃から(確か)読みはじめた「ハイぺリオン」四部作をようやく読了。面白かったです。それぞれ文庫で二分冊、一冊一冊が600頁を越える超大作なので、読むのはかなりしんどい部分もありましたが、読んで損したという気分はありませんでした。 (…

京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』(ISBN:4062754991)

読了。お馴染み京極堂シリーズの文庫版最新刊。ノベルス版ではすでにもう一作新しいのが出てるんですが、このシリーズはなぜか文庫版しか買ってません。 正直中盤まで行かないくらいにネタがもろにわかってしまったので、あとはそうでない解法の可能性を探す…

竹本健治『ウロボロスの純正音律』(ISBN:4062136260)

読了。微妙。 (続きを読む以降ネタバレあり) 解決編のアレにはかなりがっかり。京極さんの書き残したメッセージの解き方自体は「なるほどそこか」という感じで面白かったんですが、さすがにそれはないよなあ、という。清涼院涼水よりも、もしかしたら納得…

安部公房『砂の女』(ISBN:410112115X)

読了。未読だったのが若干微妙なほどの有名作品ですが、あんまり響きませんでした。確かに引き込まれるものはあるんですが、始め方と終わらせ方は好みではないし、結局寓意が勝ちすぎていると思います。なんというか、時代を超えていない、という感想です。…