2007年に読んだ本を振り返る

日本にいなかったので当然ながら読んだ本の絶対数は少ないです。今年はあまりちゃんと記録もしていないので印象評価がより前面に出ています。

オーソン・スコット・カード『エンダーのゲーム』(→読後感想

スタニスワフ・レム『完全なる真空』

神林長平『永久帰還装置』

ダン・シモンズ『ハイぺリオンの没落』(→読後感想

歌野晶午『密室殺人ゲーム王手飛車取り』

北山猛邦『少年検閲官』(→読後感想

なんだかんだで記録もしてないものがベストに入ってくるというのはアレですが。

レムは今年『天の声・枯草熱』、『ソラリス』、『完全なる真空』と三冊読んで(さらに『虚数』は読みかけなのですが)、「天の声」とどちらを挙げるか非常に迷いました。ただ、枯草熱は書かれた当時はともかく、今となっては若干古い感じが否めず、『完全なる真空』の中の「我は僕ならずや」の優れた思弁性に軍配を上げました。『ソラリス』は「海」の描写の執拗さには感嘆しましたが、全体的には驚愕するほどには至らず。しかしまあレムの本は読むと異様に疲れます。

神林長平ソノラマ文庫が潰れたということで早めに確保で読みました。「永久追跡刑事」という設定はどこかの短編で出てきたはずなんですが、手元にないため確認できず(そこがはっきりしなかったから感想書かなかったのかもしれません)。しかしその短編よりもはるかに大きなスケールで長編に仕上げた、という印象です。しかも後書きが極めて良いです。これは僕的には非常に高評価です。

歌野晶午のは問題作。普通とは違う意味でただの連作短編集にとどまっていないところが良いです。主人公はかなり終わった人間なんですが共感できるところは十分ありました。ただまあ「おもしろきこともなきよをおもしろく」的な観点も針の振れ方次第で中々大変なことになるな、と。ちなみにこの作品はほぼ完全にミステリマニア向けの気がします。

あと、本じゃないですけど『エヴァンゲリオン』見ました。話題の新映画版ではなくテレビアニメ版+旧映画版ですが。さすがに一気に見てしまいました。なんというか論理的におかしいところはたくさんあるし、ツッコミどころも豊富なんだけれども、なんとも感情が動かされる作品でした。旧映画版のラストあたりを見てだいぶ消化不良はなくなりましたが、それにしてもゲンドウの無能っぷりだけは看過できません。彼のやったこと、やらなかったことを振り返ると、ただのアホなおっさんにしか思えません。正直妻に思いこみが激しいところを利用されただけという解釈がしっくりきます。冬月ともども。まあ結局登場人物の誰にも感情移入はできなかったんですが、なんというか登場人物がみんな幼すぎです。マシなのは加持くらいでしょうか(彼もよく分かりませんし、なんで内務省なんかに入ろうとしたのか謎ですが)。エヴァー乗りの三人は14歳とかその辺ですからまあ仕方ないかもしれませんが、他の大人たちも良い意味でのタフさがまったくなくて、あのプロジェクト自体、最初からうまく行かせる気がないとしか思えません。

まあそういう不満が物凄くあるものの、最初に書いたように妙に感情を揺さぶられるものでした。多分思考が固まっていない十代の時に見ていたら物凄く負の影響を受けていた気がします。

もうひとつ、『銀河英雄伝説』のアニメ版も見ました。キルヒアイス絡みのシーンではボロボロ泣いてしまいました(笑)。それはともかく、この物語、特にヤンの話は、民主制というものについて考えるのには格好の入り口だと思っています。僕は民主制を至上価値とは考えていませんが、民主政体を採用することのリスクは誰もが知っておくべきだと思います。むしろそれを知らないで民主主義を標榜してはいけないとさえ思います。まあ昨今田中芳樹も微妙なポジションですが、新版も出ていることですし、読み返されて良い作品かな、と思いました。

そんなわけで今年もそろそろ終わりです。来年は日本に帰りますがあまり本読みすぎると人生に差し支えるので中々微妙なところです。あとこれまであまり見てなかったんですが、一時代を築いたアニメはある程度見ておきたい気もしています。ガンダムとか。