小松成美『中田英寿 誇り』(ISBN:9784344013391)

同様の経緯で読了。中田から見たドイツW杯と引退への軌跡。基本的には中田賛美本だと思います。僕は最近は中田は別に嫌いじゃないし、普通に友達になれると(向こうがどう思うかは知りませんが)思っているんですが、以下の部分だけは残念でした。

(ドイツにて)

名波の顔を見た中田は思わず「名波がいればね」と、言ってしまったのだという。

「おれのわがままをすっかり引き受けてくれた名波のような選手がピッチにいてくれたらと、思ったから。彼なら、そのプレーやしぐさで『いいよ、ヒデ。好きにやれよ。あとは任せておけよ』と言ってくれたはずだから」

私は愕然とした。選手に高度なプレーを要求する中田の心は、実は「おれを分かって欲しい、おれのサッカーを理解してビジョンを共有して欲しい」と、叫んでいたのである。ドイツでの中田の孤独が、よりいっそう色濃く縁取られて見えた。(p.361)

僕も愕然としました。僕がドイツW杯で中田に求めていた役割というのはまさに名波がやっていたような役割だったからです。そんな理想的なお手本がいたにもかかわらず、そういう形を指向していけなかったのは、やはり中田の限界だったのだと思います。

またこういうツッコミが入れられないところが、僕がこの本を「賛美本」と位置づける原因でもあります。まあそういう仕事ですからしょうがいないですけど。

まあでも中田はいろいろ大変だったんだな、ということがよくわかる本ではありました。