神林長平『ライトジーンの遺産』(ISBN:4257770058)

人間の臓器がダメになってしまう「臓器崩壊」が蔓延する世界での、「サイファ」と呼ばれる超能力者と人工臓器製造会社の因縁を描いた連作短編集。

非常に面白かったんですが、どうにもつかみ所がない、という印象。主人公はライトジーン社に作られた人造人間なので、「人間とはなにか」というテーマはもちろんあるのですが、超能力が使用される中での「言葉」「思考」に対する思索も印象的でした。

ただ、一番面白かったのは主人公が超能力はより原始的なもの、進化した一般の人間には必要がなくなったために退化した能力、と考え、「超能力でドアを開けるより手でドアを開けた方が楽だ」という話を何度かするところでした。