スティーヴン・バクスター『プランク・ゼロ』(ISBN:4150114277)、『真空ダイアグラム』(ISBN:4150114307)

 読了。極めて長大な時空間に渡るSF連作短編集。もともと一冊のものを翻訳時に二分割したらしく、原題は単にVacuum Diagramsとなっています。

 基本線は宇宙時代の人類の発展と没落で、それに宇宙の様々な知的生命体が関わってきます。特に強大な力を持ちかつ謎めいた「ジーリー」は、この宇宙におけるある一方の主役を務めており、このシリーズは「ジーリー・クロニクル」とも呼ばれているようです。

 個々の短編は基本的に独立した構成を持ち、時間的にも大きく離れた(この連作短編集で直接扱われたタイムスパンは西暦で3672年-4101284年!)ものでありながら、必ずしも途切れ途切れでもない悠久なる時の流れを感じさせてくれます。

 旅行中に読みましたが、かなり科学用語が多く、難解な部分も少なくありませんでした。が、基本線は「人間」「人間らしさ」に据えられており、SF的空想にとどまるものではありません。また枠構造が巧みに用いられてもいますが、これは今後のシリーズ展開を意識したもので、この作品自体の完成度を考えたときにはそういう形で終わらせない方が良かったんではないかとも思いました。もちろん十分納得のいくラストではあったのですが。