Jonathan P. Berkey, The Formation of Islam, Cambridge U.P., 2003 (ISBN:0521588138)

第二部"The Emergence of Islam, 600-750"、読了。多分だいぶ前に第一部を読んだことを書いたと思うのだが、やっと次に進んだ。政治的観点からではなく、イスラームの思想的なものに注目して叙述しているので新鮮で面白い。特に、イスラーム以前からの中東の宗教的思想的状況を踏まえた上でその文脈でイスラームの発展を語っている点と、イスラームの思想そのものがムハンマド以降も固まりきっておらず、その変化や成長をはっきりとした形で示している点が、非常に良い。普通の概説書ではムハンマドの示したイスラームというものがある程度の枠を持って存在し、それからはずれる形でハワーリジュやシーアなどの分派が出てくるという話になりがちであるが、この本ではユダヤ教キリスト教などの先行宗教と相互に影響しあいながら、百年二百年かけて「イスラーム」が形成されていく過程を描いている。

これ以降、僕がそれほど詳しくない時代に突入するのでモチベーションが続くかどうか心配だが、この本がイスラーム史理解のためにかなり良い本であることは間違いないだろう。

まあ、もちろん反論したい部分もあるが。