中世西アジア史

イスラームの新しさ

非常勤で毎回出してもらっている質問への回答に答える作業をしながらふと思ったのだが、イスラームというものが、現代でも、キリスト教や仏教と違って文化のバックグラウンドとして埋没してしまわず、これだけ社会に対して直接の影響力を持っているという事…

Sylloge Nummorum Sasanidarum

非常に重要なサーサーン朝貨幣に関するタイトルなのですが、いまいち全貌がつかめず。Bd 3/1と3/2だけが手に入ったんですが・・・。揃えることはできるのだろうか?ちなみに注文に勇気がいるくらいには高い本です。コイン稼業は金がかかる・・・。

ギリシャ語関連メモ

簡単テキスト検索 http://www.tlg.uci.edu/demo/textsearch?uid=0&form=simple&GreekFont=Beta Greek-English-Greek Dictionary http://www.kypros.org/cgi-bin/lexicon ビザンツ史料刊本訳本一覧 http://www.fordham.edu/halsall/byzantium/alltexts.html

新井政美『オスマンVS.ヨーロッパ』(ISBN:4062582376)

必要があって読了。内容はタイトルとはやや離れている気もするが、面白く読めた。前半二章ではオスマン帝国形成期までのトルコ民族の歩みをまとめ、後半二章ではビザンツの後継者となったオスマン帝国とヨーロッパ諸国の関係・相克を描いており、オスマン帝…

Eerik Dickinson, The Development of Early Sunnite Hadith Criticism(ISBN:9004118055)

イブン・アビー・ハーティム・アッラーズィー(240/854-327/938)というライのハディース学者が書いた「ハディース学入門書」的な著作を手がかりに当時のハディース・クリーティークがどのように行われていたかを見た研究。 まあでもこれを読むとウラマーた…

カリフ的なもの

銘文史料から見るとどうも画期は「アブド・アルマリク」「マアムーン」「ムクタディル」あたりにある。恥ずかしながらムクタディルに関してはあまり知らないので、ぼちぼち勉強したい。

価格研究

アシュトールよりもっと広範に「カネで表される価値」の研究をする必要を感じる今日この頃です。例えば町一個の値段とか喜捨の値段まで含めたような。いずれやります。

普遍史の系譜〓〓イスラーム世界における〓〓

岡崎勝世『聖書vs.世界史』(ISBN:4061493213)を読んでいて、いずれこんな論文を書きたいと思った。 ヤアクービーやタバリーといった初期の世界史著者がいかにキリスト教世界の「普遍史」伝統を受け継いでいるか、あるいは受け継いでいないか、アラビア語で…

エジプトの古代遺跡

よく言われていることには、ムスリム支配者は古代エジプトの遺跡を保護しようとはせず、壊して自分たちの建築のための石材に使った、という。これ自体は確かに事実なのだが、あまり知られていないことであるが、古代エジプトの後の時代に建てられた遺跡には…

研究会

某僕の大学の先生が主催しているペルシア語文化圏関連の研究会が昨日今日明日とあり、たいしたことはしてないとはいえ、どちらかというとホスト側にいるため、それなりに気は疲れる。皆さん良い人なんですが、僕には某後輩的突破力がありません。んー。それ…

欧文文献目録<論文編>

とりあえず自分の持っている(=コピーして手元にある)文献の入力が暫定的にではあるが完了。一ヶ月に一度のメンテが努力目標。毎月一日にやることにするか。 今後は暇と気力を見て<単行本編>に突入しなくては・・・。その後戦いはアラビア文字文献、中文…

政治史とパーソナリティ

Morony, M. G., "Bayn al-Fitnatayn: Problems in the Periodization of Early Islamic History", JNES 40-3, 1981, 247-251. この小論は年代区分という問題と関連して、ウマイヤ朝期の政治・社会史がカリフのパーソナリティと深く結びつく形で叙述されてい…

『ワクアト・スィッフィーン』

ナスル・ブン・ムザーヒム・アルミンカリー(d.212h)著と言われるこの本だが、それ以降のイスナードが各巻冒頭に記されていて、ミンカリーの著作として認識して良いか、疑問。本の形になったのはおそらく五世紀以降なので・・・。どうも文章に使われている用…

これからやることメモ

ウマイヤ朝期を通じてのイラク総督の権限の変化を追う ハッジャージュとアターとかそこらへん アーザルバイジャーンの征服、バランジャルの戦いの整理、及びそれ以降

最近の関心

最近よく考えているのは、ムハンマド死後のリッダ(棄教)討伐はなぜ行われたのかということです。これは史料批判的なこととも絡んで意外と一筋縄ではいかない問題だと思っています。

G. R. Hawting, The Idea of Idolatry and the Emergence of Islam, Cambridge U.P., 1999.(ISBN:0521651654)

端的に言うと、イスラーム以前のアラビア半島は多神教世界だったというのは、どうも嘘臭いよ、という本。ただし否定しきってもいない。具体的には、コーランの中で多神教徒と解されてきた語句の解釈の見直しと、それ以降の伝承のコーランとの齟齬、曖昧さ、…

今日の研究会

北大史学の月例会で森本芳樹先生(西洋中世初期経済史・農村史)の話を聞く。最近のヨーロッパでの学会動向を中心としたものだったが、僕に関連する古銭学・貨幣学系の研究を初め、多くの点で非常に参考となる話であった。 特に個別発見貨から当時の交易中心…

現在の課題

まとめるべきものとして頭の中にあるもの。 初期イスラーム時代における「Abd Allah」考 アブドゥルマリクの貨幣改革以前のシリアにおける貨幣発行に関する学説整理 ダーラーブギルドにおけるアラブ・サーサーン貨発行(英文がのぞましい) モンゴル以前のイ…

『集史』

某ゼミで『集史』を読んでいるためその刊本で使われているものを中心に、ちょこちょこっとその写本のことなどを調べているのだが、『集史』ってのは案外に面倒な史料なんですね。たくさん残ってるからいいというものでもないのか。 参考:白岩一彦「ラシード…

一人中世西アジアパピルス文書研究会

なるものを作ろうと思ったり思わなかったり。初期イスラーム時代史において、もちろん編纂史料だけでもやれることはたくさんあるのだが、それ以外の史料に目を配ることで、ある種の手がかりを掴みやすくなることは間違いない。これまでは貨幣に特化していた…

Ashtor

とりあえず『Les Metaux Precieux』の第一章、金について書かれた部分を読み終えた。当初の予定からはひどく遅れているが、仕方あるまい。とりあえず今後はそれをテキストとして打ち込む作業をする予定。もちろん余裕のあるときにゆっくりなペースで、だが。

カザフ語

今日講読会に出てわかったこと。 アラビア文字で読むのはキツイ。とりあえずキリル文字転写で読むべし。 トルコ語の辞書はほとんど役に立たない。 わからなかったらロシア語の訳を読め。ただし僕はロシア語が苦手だ。 ダメかもしれない。 以上。

P. Crone, ”Kavad's Heresy and Mazdak's Revolt,” Iran 29, 1991, pp. 21-42

綿密な史料批判・先行研究批判から、サーサーン朝期におけるマズダク教徒の反乱の原因をカヴァードとホスロー一世による税制改革であると主張している。面白い。本人も末尾で述べているように"guesswork"であるとは思うのだが、とても説得的である。僕の研究…

E. Ashtor, Les Metaux Precieux et la Balance des Payements du Proche-Orient a la Basse Epoque, S.E.V.P.E.N., 1971

あまり真面目に読んでなかったアシュトールを最近になって読んでいる。とても平易なフランス語のような気がする。意味が取れないところは二ページに一つくらいか。なぜだかわからないがフランス語を読むのが苦にならなくなったので、できれば訳を作ってどっ…

カザフ語

ひょんなことからテュルク諸語文献の講読会に出るかもしれないことになってカザフ語のテキストをもらった。現代トルコ語の文法はやったものの、アラビア文字で書かれたトルコ語系の言葉をまったく読んだことがないので、とても戸惑う。一時間やって一文も進…

A. A. Duri,tr. L. I. Conrad, The Rise of Historical Writing among the Arabs (ISBN:069105388X)

読了。1960年にアラビア語で書かれた、初期イスラーム時代に関する歴史文献が成立してゆく流れを叙述した研究書の英訳。ちょぼちょぼと参照してはいたが、まともに読んでいなかったので読むことにした。 感想としては第一章の"The Rise of History among the…

Jonathan P. Berkey, The Formation of Islam, Cambridge U.P., 2003 (ISBN:0521588138)

第二部"The Emergence of Islam, 600-750"、読了。多分だいぶ前に第一部を読んだことを書いたと思うのだが、やっと次に進んだ。政治的観点からではなく、イスラームの思想的なものに注目して叙述しているので新鮮で面白い。特に、イスラーム以前からの中東の…

ジャーヒリーヤ時代のムハンマド

伝承の総体は、ムハンマドの時代とそれ以前のアラブの固有名詞を万の単位で伝えている。そのなかに、ムハンマドという固有名詞はほとんどない。(中略)おそらく、ムハンマドは本名ではなく、当時からムスリムがよび慣わしていて、伝承のなかで定着した尊称…

小田中直樹『歴史学ってなんだ?』PHP新書286

読了。「第一章 史実を明らかにできるか」「第二章 歴史学は社会の役に立つか」「第三章 歴史家は何をしているか」というように微妙に歴史学に批判的な人たちが訊きそうなことに対して考察している。 筆者は経済畑の人のようだが、話は概ね的を得ていると思…

アルカム

調べたいことがありイブン・サァドのタバカートゥルクブラーをめくっていたのだが、最初期の教友の入信した時期を示すのに、「預言者がアルカムの家に入る前」というのがよく出てくる。岩波イスラーム辞典にも載っているくらい有名な話みたいだが、このアル…