政治史とパーソナリティ

Morony, M. G., "Bayn al-Fitnatayn: Problems in the Periodization of Early Islamic History", JNES 40-3, 1981, 247-251.

この小論は年代区分という問題と関連して、ウマイヤ朝期の政治・社会史がカリフのパーソナリティと深く結びつく形で叙述されていることを指摘している。

やや問題のレベルは異なるが、中国史においても皇帝や専権宰相のパーソナリティを政治史の中でどう扱うべきかというのは非常に微妙な問題であると思う。色々な政治的な動きも、色々な背景を考慮したとしても、最終的にパーソナリティにしか辿り着きえない可能性がある。

イスラーム史の文脈においてはまだまだこのような議論がしっかり行われるところまで達してはいないが、例えばMoronyが指摘しているようにムアーウィヤのパーソナリティと第一次内乱後の諸変化をどう関連づけるか、あるいは無関係なものとするかは、僕にとっても非常に悩ましい問題である。