伊坂幸太郎『死神の精度』(ISBN:4163239804)

読了。連作短編集の形で読みやすかったです。主人公は上の指示に従って、対象を殺してもよいかどうかを調査・判定する死神(とはいえその判定は基本的にはなあなあでだいたいが「可」となる)。その死神が見た対象の様子が描かれるだけではなく、調査・判定のために死神が対象に関わっていくところが面白く描かれています。

なんというか、非常に説明しづらいんですが、おそらく死に至るであろう対象の人生の最後の部分が切り取られて、センチメンタルでありながら悲劇ではなく、ハッピーエンドでもないような、独特の読後感を残しています。この前読んだ『ラッシュライフ』よりストレートに気持ちに入ってきた感じです。あとやはりディティールがとにかくいいですね。ちょっとしたスパイスがここかしこに利いています。この文体・作風なら、趣向を凝らした長編よりも、こんな連作短編の方が生きるんじゃないかと。まあ、もちろん二作しか読んでいないので評価にはまだ早いですが、だいぶこの作家読みたい感が高まってきました。

まとりあえずかなりの良作だと思います。価格もページ数も手頃なので、かなり売れるんじゃないかとも思いました。